風邪とカウンセリング 〜 カウンセリング・プロセスで見られる身体症状の意味 〜
カウンセリングでお会いしている方の中には、 ( 皆さんではありませんが ) ある時期に、風邪をひく方がいらっしゃいます。
むかしは、その意味がよく分からなかったので、 ご本人がおっしゃるように、 ただ風邪をひいた、とだけ受け取っていました。
「熱はないけどノドの調子が悪くて」という方から、 「熱を出して、一日二日休んで寝ていた」とおっしゃる方まで、 状態はさまざまです。
ご本人は「 風邪をひいたみたい 」とおっしゃり、 たしかに、風邪と同じ症状がみられます。
しかし、そうしたケースの中には、 ( すべてがそうとは申しませんが )風邪によく似た身体症状、 つまり風邪様( かぜよう )症状であることも、 かなり多いように感じるのですが、 いかがでしょうか。
風邪をひく時期は、いろいろです。
定期的にお話しするようになって少ししてからの場合もあれば、 半年くらいたってから、のこともあります。
ときには、初めてお会いした後だとか2回目くらいの時に、 「風邪をひいてしまって」と 連絡が入ることがあります。
カウンセリングを始めて一年くらいたってから、 「 十年ぶりに風邪をひいて熱を出して寝ていた 」という方も いらしたりします。
「 デトックス( 排出 )されたのかも知れませんね 」 そう申し上げることがあります。
このような風邪の症状、あるいは身体症状には どのような意味があるのでしょう。
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【 風邪の効用 】
たとえば、 故・下坂幸三氏(心理療法家・精神科医)は、 「 風邪の効用 」というエッセイを書いています。
「 学生時代に皆勤賞をもらった努力家二人、重い神経症におち いったのをみた。 数年間、一日も休まずなどというのは土台、よほど頑健な人間 ならいざ知らず、随分無理なことなのだ。皆勤とは、硬直した 生活の現われかもしれない。 神経症や精神的な病が回復期に入って、病状が悪かったときに は風邪ひとつ引かなかった人が、よく風邪を引く現象に出会う。 このような経験をもっている人は少なくあるまい。 凍りついていた感情が流れはじめ、さまざまな欲求の動きを 自覚できはじめたころに、とかく風邪を引くように思う。 風邪のもつ精神衛生的意義は、意外に馬鹿にできないのではな かろうか 」
下坂氏が語っているような、 回復してゆく時、変化してゆく時にみられる身体症状は、 カウンセリングの中でも、 とても幅広く経験するものです。
わたしの経験では、 風邪あるいは風邪様症状が、最もよく見られるものですが、 その他にも、人によっては 目立たないようですが湿疹が出たり、吹き出物だったり、 あるいは、下痢をしたり、熱っぽくなったり。
女性のご相談者の中には、不正出血がみられる場合もあります。
そのため、こうした身体症状が出た時に、 「 カウンセリングをしてきて、少しずつ良い状態になってきて いたのに、また元に戻ってしまったのでしょうか 」
そう心配される方がいらっしゃいますが、 決してそうではありません。
これらのカウンセリング・プロセスで見られる、 内面と結びついた身体症状とは、 ご自分の中で、心の内側で、 「 動かずにいたもの 」「 動けずにいたもの 」が、 少しずつ動き始めてきたことを、 教えてくれているのかも知れません。
あるいは、こうも云えるかも知れません。
「 それまで自分の中に在ったものが少しだけ壊れて、同時に、 新しい何かが心の奥に芽生えはじめ、動き始めてきた頃 」に、 心だけでなく身体も、 一緒になって揺れ動いてゆく時が、 あるのかも知れません、と。
こうした意味からも、 カウンセリング・プロセスで見られるこうした身体症状は、 とても大切な意味を持つものなのです。
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こうした身体の症状は、 具合が悪くて現れるものとは違って、 軽いものでは二〜三日、あるいは、せいぜい一週間くらい現れて いた後に、ピタッと消えてなくなる、という 不思議な動き方をします。
心配されて、内科等を受診される方もいらっしゃいますが、 「 お医者さんが、なんか不思議がっていた 」 中には、そうおっしゃる方もいらっしゃいます。
そして、重い神経症をお持ちだったり、 以前からストレスを身体症状で現すタイプのご相談者の中には、 節目節目で、幾度かこうした身体症状を繰り返しながら、
そのたびに少しずつ、薄い紙が剥がれてゆくようにして、 回復してゆく・楽になってゆく、 という方もいらっしゃいます。
目に見えないところで動いてゆくものこそ、 最も大切なものなのです。
【 発熱について 】
発熱についてですが、時々誤解されているようです。
発熱とは、身体の具合が悪くなって生じるのではありません、 その逆です。 具合の悪いところを修復するために、 生体が体温を上げて発熱が生じるのです。
たとえば、 風邪を引くと熱が出ることがあります。 熱を出して一日・二日身体を休めて寝ていると、 ズルズルと症状が長引くことなく、スッキリ回復します。
風邪の場合には、免疫系がウィルスだとか、 ウィルスに感染した自分の細胞を攻撃・排除するときに、 身体は熱を出して応援します。
体温が上昇することで免疫系は、より活性化します。
ですので、よほど尋常でない場合は別として、 安易に解熱剤で熱を下げてはいけない、と云われる理由です。
つまり風邪にかぎらず、発熱の時には、 なにかとても重要な修復作業が、 身体の内側で行なわれている、ということになります。
1・2年に一度くらいは、 熱を出して身体を休める( デトックス )するくらいが、 心身の健康には、本当はちょうど良いのかもしれません。
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