カウンセリングの始まり
カウンセリングを続けていくうちに、 こんな思いや気持ちが、そっと隠れるようにして、 訪れてくる時期があるかも知れません。
それは、たとえば、 被っていた厚い霧が晴れてきて、 気持ちが少しずつ軽くなってくる頃、だったり。
あるいは、ご自分の内側に、 これまでとは違う何かが、芽生え始めてくるようだったり、
そうした時に、 このまま進みたいような、でも進みたくないような。 そんな自分の気持ちに、 気がつく時があるかも知れません。
やっぱり、いまのままの自分でいたいような、 良くなるのが不安なような ・ ・ ・ ・
そんな気持ちになることがあるかも知れません。
「 どっちが本当の自分なのか、分からなくなっている。 こうして考えていくことできっと楽になれる、 変れるきっかけになる、そう思う自分もいれば、 次の日には、なんだか前に進みたくない気持ちになったりして、 行ったり来たりしている自分がいます 」
「 本当に良くなりたい、立ち直りたいと思っているのか、 そう考えた時に、やっぱり心の底では 今のままでいたいと、思っているような気がします 」
「 長い間悩んでいたものが、 ここで解決してしまったり良くなってしまったら、 今までの人生が、すべてムダだったような、 そんな気持ちになってしまいそうでイヤなんです 」
「 これ以上よくなりたくない 」
「 たとえですけど、自分の中で今まで築いてきたものを、 少しだけ壊しては、違うものを作ろうとするけれど、 また同じものを作ってしまって壊す ・ ・ ・ ・ というのを続けている感じに、近いかもしれません 」
「 楽になるっていうことが、 こうあるべき、こうありたいっていう自分の理想を あきらめること、投げちゃうことではないかと思えてしまう。 そうすると、すごくむなしくなってしまうんです 」
「 これまでと違う対応をすると、 なんだか自分じゃなくなったような感じがする時があって、 でも、また以前と同じ対応をしてしまう時もあって、 これでいいような、悪いような。 うまく言えないんですけど、迷っているような スッキリしているような、正反対の感覚を感じています 」
「 ●●● のところがなくなってしまったら、 私らしさがなくなってしまう気がするんです。 そう思うとすごく悲しくなるんです 」
これらの言葉は、実際にご相談される方たちが カウンセリングの中で、 わたしに語ってくださった言葉たちです。
こうした時期、こうした気持ちは、 次に来る夏の季節のために木の芽が芽吹くように、 とても自然で、とても大切なものなのです。
そして、むしろこの時期にこそ、 あなたにとっての大切な何かが、育まれている時です。
卵を抱いている鳥は、じっと動かなくなるものです。
こうした気持ちを語った方たちは、 それっきりカウンセリングをやめてしまったかというと、 そうではありません。
むしろ、その反対です。
こうした気持ちを、 カウンセリングの場でお話される方、 こうした気持ちを、打ち明けてくださる方ほど、 良い方向へ歩んで行かれることが、多い気がします。
それは、たとえて云えば、 厚い雲に隠れていた時には気がつかずにいた、もうひとつの ご自分の気持ち、と云えるかもしれません。
だとしたら、それは、 厚い雲や霧が晴れてきたからこそ 改めて気づけたもの、ではないでしょうか。
そう考えてみると、 こうしたもうひとつのご自分の気持ちに気づけるようになる、 そして、 それを面談の中で話せるようになる、ということは なによりも、大切な一歩の証(あかし)なのかも知れません。
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建物を建てるときに、いきなり地面の上に建てたりせずに、 まず土台作りから始めるものです。
土台なしの建物は、外見がどんなに豪華で立派であっても すぐに崩れ、傾いてしまいます。
カウンセリングの中で、自分自身の気持ちを知ってゆく、 理解してあげられるようになってゆくことが、 その土台づくりの一つなのかも知れません。
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