カウンセリングと身体症状
内科などに通院されていた患者さんが、 「何かストレスはありませんか」とお医者さんから訊かれて、 カウンセリングを勧められるケースがあります。
あるいは、 心療内科に通院し薬をもらっていたけれど、 お医者さんの方から、薬ばかりでなく 「 カウンセリングのようなものも必要ですよ 」と云われ、 カウンセリングにいらっしゃる方もおられます。
薬を処方だけの対症療法では、なかなか良くならずに、 慢性化してしまうケースが、とても多いからです。
あるいは、一時的に症状が改善したとしても、 また何かのきっかけで、再発や悪化をしてしまう。
そうしたこともよく見られます。
その時その時の「 症状 」だけに対応していると、 その背後にある、症状を生んでいるもの (たとえば、心のストレスだとか葛藤、悩み事など)が 放置されたままになってしまうからです。
昨今の診断の付け方は、見かけの上の、本質を問わない方向 に流れている。 それに合わせて「治療(薬物療法)は表面化した症状のコント ロールに過ぎない」というキャンペーンが行なわれ、症状に 対応した形で薬が出されている。DSM(アメリカ製のマニュア ル診断法)で診断するとは治療を無視して診断することのよう に見える。 ( 神田橋條治 精神科医 精神療法 )
たとえば、 心身症に数えられているものばかりでなく、 多くの身体の病気は、 精神的なストレスなどによって状態が悪化していくことは、 誰もが経験的によく分かっていることです。
心と身体とは、すでご存じのように、 中枢神経系( 脳と脳に直接つながる部分)によって、 神経系・免疫系・内分泌系・代謝系などを通して、 互いに深く結びついているからです。
「 心身一如 」という言葉もあります。
そして、カウンセリングを続けてきた経験から、 次のようなことは、云えるかもしれません。
身体と心とは、普通に考えられている以上に ずいぶんと深いところで結び合って生きているものです、と。
関連ページ 心身症とは
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たとえば、よく経験することのひとつに、 身体症状にまつわることがあります。
たとえば、病気とまではいかないけれど、 日頃、体調の不調感だとか、身体の症状に悩まされる。 病院に行って診てもらうけれど、 具体的な異常は見当たらず、薬だけもらって帰ってくる。
あるいは、マッサージや整体に行って施術をしてもらうと、 その時は調子が良くなるけれど、 すぐにまた元の状態にもどってしまう。
こうした身体症状を抱えていた方が、 カウンセリングでお話をされてゆく方の中で、 「(身体の症状が)あれから気にならなくなった 」 「 最近は、以前のようには(症状が)出なくなっている 」
そんな言葉をお聞きする機会が、しばしばあります。
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「 病は気から 」ということばがあります。
この場合の「 気 」とは、けっして 気のせい、とか気分次第、という意味ではありません。
心と身体とは深いところで結びあったもの、という意味です。
「 心身相関 」という言葉もあります。
【 心は身体の働きを応援する 】
たとえば、ご存じのように、 「 笑い 」が血糖値を下げる作用のあることが、糖尿病の患者 さんの協力を得ておこなわれた実験で、明かとなっています。
これはなにも、笑いに「 不思議な作用 」があって、血糖値が 下がるわけではなく、感情が脳を通して、自律神経や内分泌系、 免疫系などに、よい影響を与えるからです。
身体みずからの働きを、応援しているわけです。 このように心(感情や気持ちの働き)には、 身体の働きを応援する良い作用があります。
【 身体は心を受けとめる 】
その一方で、 心のつらさや苦しさを、身体が受けとめて、 いろいろな身体症状・心身症を生み出すこともよくあります。
日常よく見られるものでは、 血行が悪くなって顔色がすぐれなくなったり。 胃が痛くなったり、歯茎が腫れたり、湿疹が出たり。 手足の冷え、便秘になったり。
黒かった髪が白く変わる、ということもあります。
そのため、心労やストレスが重なって、 白髪が増えてゆくケースも、しばしば見られることです。
激しいショックを受ける経験をして、 一晩で髪が白くなる、などという話は昔からあります。 あるいは、すっかり髪が抜け落ちてしまう。
こうした変化は、外から目に見えるものですが、 同時に、 目には見えない身体の内側でも、変化が起きています。
たとえば、脂肪肝になったり、 内臓や関節の炎症が引き起こされたり、 免疫系のバランスが崩れて様々な感染症が引き起されたり。 ということが身体の内側で起きています。
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