インテイク面接について
森のこかげでは、カウンセリングの前に、 情報収集のための面接などは、おこなっておりません。
事前に相談者の情報を収集するための面接を 「インテイク面接」と呼んでいます。
カウンセリングでは、お話をしてゆくプロセスの中で お訊きする必要が生じた時に、 必要な範囲で、お訊きする関係が基本です。
あらかじめ聴取した情報によって、 先入観を持ってカウンセリングを始めるのではなく、 カウンセラーが一緒にお話をしてゆく中で、 理解を深めていくやり方が、 カウンセリングでは本質的に、とても大切になるからです。
インテイク面接では、相談内容、家族構成や家族の情報、 職歴、病歴、その他を聞き取っていきます。
インテイク面接の代りに、 アンケートや問診表を細かく記入させる場合もあります。
カウンセリングや心理療法をおこなう所では、 このようなインテイク面接をおこなうところが数多くあり、 それが今や常識のようになってしまっています。
インテイク面接については、 神田橋條治氏(精神科医・精神療法)が、こう語っています。
巷間流布しているインテイク面接などというものは、精神療法 ( 心理療法やカウンセリングと同じ意味。医者は精神療法と いう言葉を好んで使う )がまだ始まっていないつもりでおこ なわれているとしたら、治療にとり有害無益である。ましてや、 インテイカーと治療者とが別人であるなど、もってのほかであ る。救急医療におけるタライ回しと同じ効果が加わる。 いわゆるインテイクで聴取される資料は、主訴について二人で 考えていく流れのなかで、必要になったときどきに問うて語っ てもらうというのが、精神療法における定石である。
心療内科などのクリニックや病院では、 心理士にインテイク面接を担当させているために、 受診した患者さんの中には、こうしたインテイク面接を、 カウンセリングと誤解されている方もいらっしゃいます。
光本和憲氏(心理療法家)は、このように指摘しています。
現在、そういう情報収集法(インテイク面接)が、多くの相談・ 治療機関で常識となっており、そうした場で、優秀な治療者とし て育つのは、かなり難しいと言わなければならないであろう。
カウンセリングを学習中の者や初学者を インテイクに当らせている所もあるようです。
以下の文章は、女優の荻野目慶子さんが 雑誌に書いていらしたものです。 荻野目さんは、自殺をしている恋人を発見します。
スキャンダルとして扱われ、生きる上で窮地に立たされた。 しかし仕事は難しくなり、八方ふさがりだった。当時、病院を 何軒、回っていたことだう。精神科医にも何人、逢ったことか。 私の場合、本名と芸名が同一のため、その度に好奇の眼を感じ、 およそ心の内を話せる状態に至らず、「こんな人が精神科医に?」 という疑問、裏切られたような哀しみ、やり場のない絶望感に 打ちのめされ、薬だけを手にして逃げるように去った日々。 分厚いアンケート、見るだけでウンザリする、あるいは気恥ず かしくなる様なアンケートをさせる病院もあった。自律神経失 調症に関する本で探した、その道では有名な病院だったが。 おきまりのアンケートで人間を図面化し、それを入口にして何 が見えてくるのか。 どうしてまず最初にその人間の印象、眼光や挙動、その時発信 している空気を感じようとはしてくれないのか。 ( 新潮45 自殺で残された側は 2000年 )
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